講師へのご質問に対する回答

このたびは、プラクティカル看護セミナーをご視聴いただきありがとうございます。
2022年4月24日に開催しました「なぜ使う? どう使う? 循環器の薬の知識」につきましていただいたご質問のうち、生配信当日に触れられなかった下記のご質問

  1. 内服できる場合でも貼付薬を選択するときはどんなときですか?
  2. 心機能が低下されており、ベースが頻脈になっている患者様に対して、レートコントロールを行うために薬物療法を行なっていましたが、心拍数が落ち着くにつれて、胸部症状や体調不良の訴えが多くなりました。このような場合の考えられる誘因と今後の治療方針についてお聞きしたいです。

これらにつきまして、講師より回答がございましたので、以下にお示しします。

内服できる場合でも貼付薬を選択するときはどんなときですか?

回 答

以下の2つあると思います。

  • 1)介護を受けられている方:薬の飲み忘れがないか、介護の方にもわかりやすい
  • 2)安定した薬の効果を得たいとき:貼付薬は一定量の薬が皮膚から血液に移行するので、一定の薬効が得られやすい

心機能が低下されており、ベースが頻脈になっている患者様に対して、レートコントロールを行うために薬物療法を行なっていましたが、心拍数が落ち着くにつれて、胸部症状や体調不良の訴えが多くなりました。このような場合の考えられる誘因と今後の治療方針についてお聞きしたいです。

回 答

心機能が低下しているとき、頻脈になるのは適応現象です。
仮に通常の心腔内血液が100 mLとして、左室駆出率(EF)の下限が50%、心拍数が60/分とすると、1分間の心拍出量は

100×0.5×60 = 3000 mL/分

となります。最低3Lの血液が1分間に心臓から送り出される必要があることになります。もしEFが35%に低下すると

100×0.35×60 = 2100 mL/分

となりますが、脈拍が85/分になると

100×0.35×85 = 2975 mL/分

となり、1分間の心拍出量をほぼ正常に保てます。これを脈拍60/分に下げると、症状が出てきてしまうのは、当然のことです。

では、治療方針はどうしたらいいのか、というと

  • 1)心拍数を徐々に下げる(βブロッカーを低用量から徐々に漸増する)
  • 2)ANPやニトログリセリンで高負荷を下げる、虚血がある場合は虚血の治療をするなどでEFを上げる治療を先行あるいは併用する
  • 3)酸素の需要と供給のバランスを考えて、供給がすぐには増やせない場合は、需要を減らすことを考える。つまり、酸素需要を下げる(=運動制限など)ことを併用する