神さまの病気、日本紅斑熱・SFTS

現在、日本紅斑熱は、感染症法によって、全例の届け出が医療機関に義務づけられている。年間200例を超す症例が届け出され、毎年数例の死亡例が記録されている。

西南日本における日本紅斑熱の発生地域は、ユニークな分布を示す。流行地は伊勢神宮(三重県)、熊野古道(三重県~和歌山県)、出雲大社(島根県)、四国遍路の南部地域、天草、上五島などである。つまり、昔のままの森が残る、最近ではパワースポットとして注目を浴びる地域に、この日本固有のリケッチア症が多発する。「神さまの病気」ともいえそうだ。人の手が入らない森に住むシカやイノシシを吸血するキチマダニの幼虫がこの熱病を媒介する。日本紅斑熱という病気は、人とシカ・イノシシがともに感染する「人獣共通感染症」でもある。

「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」と「日本紅斑熱」は、臨床症状のみならず、発生地域がほぼ重なる。病原体を媒介するマダニが共通だからである。SFTSは,マダニに咬まれたあと1~2週間で、発熱と消化器症状(吐き気、嘔吐、腹痛、下痢)をきたし、筋肉痛、リンパ節の腫脹や出血症状を伴う。マダニの刺し口の確認は重要だ。血液所見では、血球貪食によって血小板と白血球が減少する。致死率が30%に及ぶ怖い感染症だ。

→次のコラム